記事作成者:株式会社アイリス
不動産管理業の保証事業およびDX推進コンサルタント、不動産Techソリューション事業

2026.11.01

高齢者の入居を受け入れたいものの、家賃滞納や孤独死、緊急時の対応などに不安を感じている賃貸管理会社やオーナーも多いのではないでしょうか。
高齢者が借りられる賃貸住宅を増やすには、入居審査の基準を見直すだけでなく、入居後のリスクに備えた管理体制を整えることが重要です。
家賃債務保証会社や見守りサービス、孤独死保険などを活用することで、安心して受け入れられる環境づくりにつながります。
本記事では、高齢者の入居を受け入れるメリットや管理会社が抱える課題、活用したいサービスの選び方を解説します。
セーフティネット住宅の基礎知識や社内ルールの整備についても紹介するので、高齢者の受け入れ体制を見直す際にお役立てください。
目次
日本では高齢化が進み、一人暮らしの高齢者を含め、安定した住まいの確保が重要な課題となっています。
持ち家がない人や家族との同居が難しい人にとって、賃貸住宅は生活を支える重要な選択肢です。
一方、賃貸管理会社やオーナーの中には、家賃滞納や孤独死、緊急時の対応などへの懸念から、高齢者の入居に慎重なケースもあります。
そのため、家賃を支払う能力があり、自立した生活を送れる人でも、住まい探しに苦労する場合があります。
こうした課題に対応するため、国は住宅確保要配慮者の入居を支援する制度を整備しています。
その一つが「セーフティネット住宅」です。
これは、高齢者など住宅の確保に配慮が必要な人の入居を拒まない住宅として登録する制度で、住宅の規模や設備などに所定の基準が設けられています。
管理会社にとって、高齢者の受け入れ体制を整えることは、住まいを必要とする人への支援だけでなく、入居対象者の幅を広げることにもつながります。
空室対策の一環として、地域の需要や物件の特性を踏まえながら、高齢者の受け入れを検討してみましょう。
高齢者の入居を受け入れる際、管理会社やオーナーが不安を感じやすいのは、主に家賃の支払い、緊急時の対応、入居者が亡くなった後の手続きです。
ただし、これらのリスクは年齢だけで一律に判断できるものではありません。入居希望者の収入や生活状況、支援体制を個別に確認し、必要な対策を検討することが大切です。
高齢者の中には、年金を主な収入源として生活している人もいます。管理会社は、家賃が収入に対して無理のない金額か、継続的に支払える見込みがあるかなどを確認する必要があります。
家賃の支払いに不安がある場合は、家賃債務保証会社の利用を検討する方法があります。保証内容や審査条件を確認し、入居希望者の状況に合ったサービスを選びましょう。
一人暮らしの高齢者が室内で体調を崩した場合、周囲が異変に気づくまで時間がかかる可能性があります。
こうしたリスクに備えるには、緊急連絡先を確認するだけでなく、安否確認の方法や異常を検知した後の連絡手順を決めておくことが重要です。必要に応じて、センサーや電話による見守りサービスを活用しましょう。
(Mimamoのページリンク設置)
入居者が亡くなった場合、状況によっては室内の原状回復や残置物の整理、賃貸借契約の終了に向けた手続きなどが必要になります。
これらの費用や手続き上の負担に備えるには、孤独死保険の補償内容や残置物処理に関する契約を確認しておくことが大切です。緊急連絡先と相続人、残置物の処分を決定できる人の役割も区別しておきましょう。
このように、不安を具体的なリスクに分けて対策を検討すれば、高齢者の受け入れに向けた判断基準を整えやすくなります。
高齢者の受け入れ体制を整えることは、賃貸管理会社にとって空室対策の選択肢を広げる取り組みでもあります。
入居対象を必要以上に限定すると、物件の条件に合う入居希望者を見つけにくくなり、空室期間が長引く可能性があります。
特に、築年数が経過した物件や駅から離れた物件などでは、地域の需要を踏まえて入居対象を見直すことが有効な場合もあります。
ただし、高齢者を受け入れれば必ず空室が減るわけではありません。
立地や家賃、建物の設備、地域の高齢者人口などを踏まえ、需要を見極める必要があります。
受け入れを進める際は、次のような取り組みを検討しましょう。
居住支援法人とは、住宅確保要配慮者に対して、入居相談や生活支援などを行う法人です。
地域によって支援内容が異なるため、自治体の窓口などで利用できる支援を確認するとよいでしょう。
すべてのリスクを管理会社だけで解決しようとするのではなく、外部サービスや支援機関と連携することが、継続的な受け入れ体制の構築につながります。
高齢者の入居を受け入れるには、入居希望者の状況に合わせて対策を組み合わせることが重要です。
ここでは、管理会社が検討したい4つの方法を紹介します。
家賃債務保証会社とは、入居者が家賃を滞納した場合などに、契約で定められた範囲で家賃などを立て替える会社です。
保証会社を利用することで、家賃滞納が発生した場合の金銭的なリスクを軽減できる可能性があります。
ただし、保証会社が立て替えた費用については、原則として入居者への請求が生じる仕組みであり、滞納そのものがなくなるわけではありません。
選ぶ際は、次のポイントを確認しましょう。
保証対象や利用条件は会社によって異なります。
保証会社を利用すれば、すべての滞納や退去時の費用が補償されるわけではないため、契約前に内容を確認することが大切です。
また、家賃の支払いに関する対策と、入居後の安否確認に関する対策は別に考える必要があります。
必要に応じて見守りサービスなどを組み合わせ、金銭面と安全面の両方に備えましょう。
見守りサービスは、高齢者の安否確認や異常の早期発見を支援するサービスです。
一人暮らしの高齢者が体調を崩した場合などに、異変を把握し、必要な連絡につなげる仕組みとして活用できます。
主なサービスには、次のような種類があります。
サービスによって確認方法や対応範囲が異なるため、入居者の健康状態や生活スタイルに合わせて選びましょう。
導入前には、次の項目を比較することが重要です。
特に重要なのは、異常を検知した後の対応手順です。
サービスから通知が届いた際、誰が入居者に連絡するのか、連絡が取れない場合に誰へ連絡するのか、必要に応じて誰が現地へ向かうのかを決めておきましょう。
なお、見守りサービスは事故や孤独死を完全に防ぐものではありません。
サービスの特性と限界を理解し、緊急連絡先の確認やほかの支援策と組み合わせることが大切です。
孤独死保険は、入居者が室内で亡くなった場合などに発生する費用について、契約で定められた範囲で補償する保険です。
商品によっては、原状回復費用や遺品整理費用、事故後に発生した家賃の損失などが補償対象となる場合があります。
保険を選ぶ際は、次の点を確認しましょう。
補償範囲や適用条件は保険商品によって異なります。
管理会社やオーナーが加入する保険だけでなく、既存の火災保険などに関連する補償が含まれていないかも確認するとよいでしょう。
また、保険は主に費用面のリスクに備えるものであり、入居者の安否確認や契約終了後の手続きを代行するものとは限りません。
見守りサービスや残置物処理に関する取り決めとあわせて検討することが重要です。
入居者が亡くなった場合、室内に家具や家電、生活用品などが残されることがあります。
残置物の整理や処分には、相続関係や所有権、賃貸借契約の終了手続きなどを踏まえた対応が必要です。
残置物処理サービスなどを利用する際は、次の項目を確認しましょう。
入居者が亡くなったからといって、管理会社やオーナーが自由に残置物を処分できるわけではありません。
緊急連絡先に登録されている人が、必ずしも相続人や処分を決定できる立場にあるとも限らないため、関係者の役割を区別する必要があります。
残置物の処理に関する契約を結ぶ場合は、適切な契約手続きや法令への適合を確認しましょう。
必要に応じて、弁護士などの専門家や居住支援に関わる機関に相談することも大切です。
家賃債務保証会社、見守りサービス、孤独死保険、残置物処理に関する備えを組み合わせれば、入居前から入居後、退去時までを見通した管理体制を整えやすくなります。
高齢者の受け入れにあたって見守りサービスを導入する場合は、料金だけでなく、異常検知の仕組みや管理会社の運用負担も含めて比較することが重要です。
見守りサービスを選ぶ際は、安否確認の頻度だけでなく、異常を検知した後に誰がどのように対応するかを確認しましょう。
例えば、一定時間センサーに反応がない場合に通知するサービスでは、外出や旅行などで生活パターンが変わると、異常がなくても通知される可能性があります。
一方、緊急ボタンを操作するタイプは、入居者自身が操作できない状況では通報が難しい場合があります。
導入前には、次の項目を確認してください。
通知を受けた後の連絡手順を具体的に定めておけば、緊急時の対応漏れを防ぎやすくなります。
見守りサービスの料金体系には、初期費用と月額料金がかかるもの、機器の購入費用が必要なもの、利用戸数に応じて料金が変わるものなどがあります。
費用を比較する際は、次の項目を整理しましょう。
複数の物件に導入する場合は、1戸あたりの料金だけでなく、導入戸数を増やした場合の総額も確認することが重要です。
また、初期費用が安くても月額料金が高いサービスや、追加対応に別料金がかかるサービスもあります。
一定期間の総費用を比較し、自社の運用に合ったものを選びましょう。
サービスの料金が安くても、異常通知の確認や入居者への連絡、対応記録の作成などを管理会社がすべて担う場合、業務負担が大きくなる可能性があります。
そのため、通知の一次対応を誰が行うのか、休日や夜間の連絡に対応できるのか、担当者不在時の引き継ぎはどうするのかを確認しましょう。
あわせて、入居者が無理なく利用できるサービスかどうかも重要です。
スマートフォンの操作に慣れている人にはアプリ型が合う場合がありますが、機器の操作が難しい人には電話や訪問による確認が適していることもあります。
費用、対応範囲、管理会社の業務負担、入居者の使いやすさを総合的に比較することで、継続して運用できる見守り体制を整えやすくなります。
外部サービスを導入するだけでは、高齢者の受け入れ体制が十分に整うとは限りません。
入居前の確認事項や緊急時の連絡先、入居後の対応フローなどを社内で統一しておくことが重要です。
入居前には、緊急連絡先の氏名、続柄、電話番号などを確認し、必要に応じて予備の連絡先も把握しておきましょう。
また、次のような項目を整理しておくと、緊急時の対応がスムーズになります。
ただし、緊急連絡先として登録されている人が、家賃の支払いや残置物の処分などに責任を負うとは限りません。
保証人や連帯保証人とは役割が異なるため、それぞれの責任範囲を明確にしておく必要があります。
緊急連絡先の確保が難しい場合も、保証会社や見守りサービス、自治体の相談窓口など、ほかの支援策を含めて検討することが大切です。
見守りサービスを利用する場合は、対象者や利用条件、費用負担を事前に決めておきましょう。
例えば、次の項目を社内ルールとして整理します。
入居者に費用負担を求める場合は、契約前に料金やサービス内容を説明し、必要な同意を得ることが重要です。
また、個人情報の取り扱いについても、取得する情報の種類や利用目的、情報を共有する相手などを明確にしておきましょう。
利用条件を統一しておけば、担当者による説明のばらつきを抑え、入居者との認識のずれも防ぎやすくなります。
見守りサービスから通知が届いた場合や、入居者と連絡が取れない場合に備えて、社内で対応フローを共有しておく必要があります。
例えば、次のような流れを基本として、サービスの仕様や入居者の状況に応じて具体化しましょう。
生命に危険が及んでいる可能性がある場合などは、社内の通常の連絡手順にこだわらず、必要に応じて消防・救急などの公的機関へ連絡することも重要です。
あわせて、休日や担当者不在時の対応方法、代理担当者への引き継ぎ方法も決めておきましょう。
対応フローを文書やチェックリストにまとめ、定期的に見直すことで、担当者による対応のばらつきや業務の属人化を防ぎやすくなります。
高齢者が借りられる賃貸住宅を増やすことは、住まいの確保を支援するだけでなく、賃貸管理会社にとって入居対象者の幅を広げる取り組みにもなります。
高齢者の入居を受け入れる際は、家賃滞納や孤独死、緊急時の対応などへの不安を具体的なリスクに分け、それぞれに合った対策を検討することが大切です。
主な対策として、次の4つが挙げられます。
さらに、セーフティネット住宅の制度や居住支援法人との連携も検討し、入居前の確認事項、費用負担、緊急時の対応手順などを社内で統一しておくことが重要です。
すべての高齢者に同じ対策を適用するのではなく、入居者の生活状況や支援の必要性、物件の特性に応じて必要な対策を組み合わせましょう。
管理会社だけで対応しきれない部分は外部サービスや支援機関と連携し、無理なく継続できる受け入れ体制を整えることが、高齢者が安心して暮らせる住まいづくりと安定した賃貸経営につながります。